厚生労働省研究班(主任研究者 津金昌一郎氏)が、平成2年及び、平成5年に全国の9の保健所(岩手県二戸、秋田県横手、新潟県長岡、茨城県水戸、長野県佐久、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部、沖縄県宮古)の管内に在住の40〜59歳の男女6万人を対象に、5年間にのビタミンD、カルシウム、乳製品の1日当たりの摂取量を算出した
摂取量ごとに2〜4つのグループに分け、その後糖尿病発症リスクとの関連を調べた。
アンケートでは調査期間中に、男性634人、女性480人、計1,114人が新たに糖尿病を発症したと回答。
乳製品の摂取量(50g未満、50〜150mg未満、150〜300mg未満、300g以上)の4つのグループに分類し、その後の糖尿病発症のリスクを男女別に検討した結果、女性において乳製品の摂取量がもっとも高いグループでは最も低いグループに比べ、糖尿病発症リスクが約30%低くなる事がわかった。
また、カルシウムの摂取量が最も高いグループでは、最も低いグループに比べ約24%もリスクが低くなる傾向が見られたが「統計学的な有意な関連ではない」としている。
一方、男性では、カルシウムおと乳製品いずれの摂取量も糖尿病発症との間に関連は見られなかった。
また、ビタミンD摂取量による糖尿病発症のリスク試験については、男女ともに統計学的に有意な関連は見られなかったが、ビタミンDの摂取量が平均多い群と少ない群に分け、カルシウム摂取量と糖尿病のリスクの関連を見ると、男女ともにビタミンDの摂取量が多い群においてのみ、カルシウム摂取量が多いと糖尿病のリスクが低くなる関連が明らかになった。
このほか、全対象者に実施された「食物摂取頻度アンケート」で、各グループの摂取量(中央値)を算出したところ、カルシウムについては男性が最も少ないグループで1日当たり254mg、最も多いグループで629mg、女性では329mgと810mgだったこともわかった。
今回の調査の結果から、乳製品と糖尿病との間に女性のみ関連が認められたが、その理由として「女性では乳製品の摂取量が全体的に高いのに対し、男性は低くリスクを低減するのに十分な量ではなかった可能性が考えられる」との事。
一方、ビタミンDは、日光(紫外線)に当たることにより皮膚で作られることから、男女ともに食事からの摂取量のみでは体内のビタミンDの全量を反映できなかったことが考えられるとした。
研究班は、「ビタミンDおよびカルシウム摂取量と糖尿病予防のメカニズムの詳細はわかっていない」事を前提にしながらも、ビタミンDは、膵臓のβ細胞に直接作用し、インスリン分泌に関与している事、またカルシウムが細胞内のインスリンのシグナル伝達に関与している事が報告されている事から、ビタミンDとカルシウムが体内で不足するとインスリン感受性が低下するという。
これらが、糖尿病の発症に関連している可能性が考えられ、また、ビタミンDはカルシウムの吸収に関与している事から、「2つの栄養素が高い群で相乗効果となり、糖尿病の発症リスクが低くなったと考えれる」としている。
今回の研究結果ではビタミンDとカルシウムの摂取により、糖尿病発症リスクを低減させる事が示されたし、「カルシウムの摂取量が増加する事により、糖尿病を予防する可能性が考えれる」としている。
なお、研究班は、「結果に影響すると考えられる家族歴、肥満等を考慮して解析したが、未知の要因、健康生活的習慣などにより予防的にみえる可能性も考慮しなければならない」とし、カルシウムやビタミンDのサプリメント(健康補助食品)に関しては、「検討されていないため、そのサプリメントの摂取による予防効果はわからない」としている。
引用元:健康産業新聞(2010年3月3日 第1332号)
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