瞑想が心臓病の改善に役立つか―米国では、心臓疾患が死因の1位だけに関心が高く、補完代替医療の効果を調べる様々な臨床試験が行われてきた。ロサンゼルスのシーダーズ・サイナイ医療センター診療部長ノエル・B・メルツさんが注目したのが瞑想だ。
「心臓に悪影響を与えるとされる精神的なストレスを減らす可能性のある方法と考えました」と言う。
ここで指導した瞑想は、イスに座ったり、横になったり、リラックスできる姿勢になって、呼吸に意識を集中して、深くゆっくり複式呼吸する方法。
臨床試験には、狭心症など心臓疾患を持つ103人が参加。16週間にわたり、20分間の瞑想を1日2回行ったグループと、瞑想はせず、運動、栄養、薬についての健康教育を受けたグループで、心筋梗塞などの危険度の指標となる血圧、心拍の調整機能などを比較した。
その結果、瞑想のグループはわずかながら、血圧が下がり、心拍の調整機能も改善した。メルツさんは「瞑想には、薬のような副作用がなく、お金もかかりません。ぜひ、取り組んでみて下さい」と話す。
ロサンゼルス郊外のメアリー・M・ギルバリーさん(82)は7年前に臨床試験に参加したのをきっかけに、瞑想を習慣にしている。
イスに座り、呼吸に集中すると、憎しみや怒りなどストレスを忘れ、「ヨセミテ渓谷やグランドキャニオンなどの美しい自然に包まれているような気分になる」と言う。気分が落ち着き、以前より体調が良くなったと感じている。
瞑想の臨床試験は、米国・国立補完代替医療センターの助成研究の一つ。心疾患では、ビタミンE、低炭水化物ダイエット、はりなどでも行われてきた。
瞑想などのように、心身をリラックスさせる方法は、費用もかからず、手軽なことから、ヨガの臨床研究も行われている。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校では、息切れに悩まされるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者を対象に効果を検証した。ヨガを行ったグループは、12週間後、6分間に歩行できる距離が延びた。
参加者が約30人と少ないので確定的なことは言えないとしつつも、研究者のドーアン・クエンコさんは「ヨガには、呼吸困難の苦痛を減らす可能性がある」と語る。
ヨガは健康な高齢者の身体能力や活力を改善させたが、認知能力の向上には役立たなかったとする、別の研究もある。医療費がかからず、有効な方法を見つけることも、米国が研究費を投じる目的だ。
※米国・国立補完代替医療センターの研究対象
【伝統医学】 中国医学、はりなど
【精神・身体療法】 瞑想、ヨガ、芸術療法、音楽療法など
【食品】 ハーブ、サプリメントなど
【手技療法】 カイロプラクティック、マッサージなど
【エネルギー療法】 気功など
読売新聞 2007年6月13日
|