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[2007.06.13]

代替医療は効くのか 1
「毒出し点滴」大規模検証


 糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、狭心症、不整脈・・・。さまざまな不調を抱えていた相模原中央病院院長の中野重徳さん(76)。一昨年11月から「キレーション※」という特殊な治療を、都内のクリニックで受けている。
 体内の有害な重金属などを取り込むアミノ酸を点滴で注入し、尿から排出するというもの。「重金属と同時に血管壁の余分なカルシウムを除くことが動脈硬化の予防になる」という説に医学的可能性を感じて試している。
 近年、アンチエージング(抗加齢)医療として、美容目的に行うクリニックもでてきているが、効果を疑問視する声もある。

 通常の医療では認められていないこうした医療は「補完代替医療」と呼ばれる。はりきゅう、瞑想、ハーブ、サプリメント、気功、マッサージなども含まれる。
 効果の科学的な評価が難しい分野だが、米国では、国民の4割が利用しているという実態に、1998年に国立補完代替医療センターを設置、効果や安全性の研究に乗りだした。
 これまでに1200以上の研究に助成してきたが、現在、3000万ドル(約36億円)を投入して、キレーションの大規模な臨床試験が行われている。
 50歳以上の心臓発作経験者を二つのグループに分け、一方には本物を、もう一方には食塩水を点滴して、数年間、心臓病予防効果を比較する。1800人のデータを集める予定だ。

 この臨床試験を企画した、米フロリダ州マイアミにあるマウントサイナイ医療センターの心臓血管部門・臨床試験責任者のヘルバシオ・ラマスさんは、元々はキレーションに否定的だった。しかし、高血圧、心臓病に鉛が関係するとの複数の研究報告があることから、「検証が必要」と考え直したという。
 キレーションでは、ビタミンB群やマグネシウムなど体に必要な物質も排出される恐れがあるので、点滴内に補う。また、腎臓の負担が増すため、腎臓に障害を持つ人は、臨床試験には参加できない。「大規模試験には、効果だけでなく、副作用なども調べ、どういう人が受けるべきか確かめる意味もある」とラマスさんは語る。

 中野さんの場合、一昨年11月、服薬で130〜81に抑えていた血圧は、先月は、薬なしで116〜73にまで下がったという。
 ただし、毎朝1時間歩き、油っぽい食事や酒量を減らす生活習慣改善にも取り組んできた。中野さんは「その効果も大きいかもしれません」と柔軟に受け止めている。

 補完代替医療の効果を科学的に明らかにする取り組みを、米国の事情も交えて紹介する。

※キレーション
保険が効かない自費診療で、費用は施設により異なる。中野重徳さんが受ける都内のクリニックでは、90分の点滴1回で約2万円。通常、10〜20回以上は続ける。

読売新聞 2007年6月12日

 
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