ノロウィルスを主な原因とする感染性胃腸炎が、過去25年間で最大の流行となっている。冬場に目立つこのノロウィルス食中毒。まだまだ警戒を怠ることはできない。
ノロウィルスというのは、普通の細菌よりずっと小さく、電子顕微鏡でなければ観察できないほどの粒子だ。平成15年8月にSRSV(小型で球形のウィルス)という名前からノロウィルスとなった。
ノロウィルスに感染すると、下痢や嘔吐(おうと)、発熱(38度以下)などの症状が出るが、通常は1-2日で治る。しかし、まれに1日に20回もの激しい下痢をすることもある。高齢者や子どもは、重症化することが多いから注意が必要だ。
感染経路としては、カキの生食によるケースが目立つ。カキをはじめとする貝類が感染源となるのは、河川を通じて海に流れ込んだノロウィルスが、エサと一緒に貝の体内に濃縮されていたためだと考えられている。
だから、カキを生食することによって、ノロウィルスが人体に入って発症するのだが、ノロウィルスを持った人がトイレの後で手をよく洗わずに調理をすると、ノロウィルスが食品に付着し、汚染された食品で、さらに感染者を増やすことになる。
ノロウィルスは人間の体内で増えるので、糞(ふん)便の中には多量に出てくる。しかも、少量(数個から百個)でも感染するのでなんとも厄介なのだ。
病状は1-2日で治ると前述したが、その後一週間ぐらいは便にノロウィルスが排出されるので、予防が大切だ。その予防法だが、カキなど貝類は、できるだけ中身にまで火を通すこと。そして、調理する人は、トイレの後や調理前に手を洗うこと。また、調理器具にノロウィルスをつけないように注意し、消毒することも必要だ。
高齢者が多く感染し、重症化するのは、老人施設や病院での集団感染が多いからだ。これは感染した調理従事者が食品を扱ったり、患者の排せつ物などから人の手を介して感染が広がるためとみられる。
それにしても、冬場に猛威を振るうのはなぜか。はっきりはしていないが、カキの生食するのが、ほとんど冬場に限られているためとされる。たしかに、レモンをしたたらせた生ガキは冬の味覚だ。だからといってノロウィルスをのさばらせるわけにはいかない。
食後やトイレ後の手洗いを徹底することだ。
奈良新聞 2006年12月21日
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